大鳥居の向こう、参道沿いにずらりと並ぶ無数の献灯は、みたままつりを象徴する風景の一つ。みたままつりは毎年、東京のお盆にあたる7月13日〜16日に開かれています。期間中、境内には戦歿者を慰霊するための提灯が灯ります。
灯りに包まれる夏の夜〜 みたままつりを訪ねて〜
夏の靖國神社を彩る「みたままつり」。境内を埋め尽くす提灯の灯りや、全国各地から集まる伝統芸能など、この祭りならではの風景が広がります。にぎわいの奥には、この期間だけ許される、特別な祈りの場も。7月13日〜16日に開催された、みたままつりの様子をご紹介します。
夜空に浮かび上がる、提灯の海を歩く
第二鳥居の先、仙台七夕飾りが涼しげに風になびく神門をくぐり、境内に入ると目に入るのが、懸雪洞。画家や文化人、力士など、各界の名士が直筆の絵や文字(揮毫)を描いたものが数多く奉納されています。カラフルなイラストや、さまざまな言葉に込められた思いを想像しながら見て回るのも楽しそう。
お気に入りの絵やデザインを見つけたり、書かれた言葉に感銘を受けたり。一つひとつをゆっくり眺めて歩いているうちに、あたりはだんだん暮れてゆきます。すると懸雪洞も光を点し始め、昼間とは表情を変えながら、描かれた言葉やイラストとそこに込められた思いをやさしく浮かび上がらせます。
内苑には、約2万の小型献灯も掲げられます。一面がその灯りに包まれると、まるで光の海の中を歩いているよう。賑やかなみこし振りの声や音が遠くに聞こえ始めれば、おまつり気分はクライマックスへ。
境内で出会う、日本各地の芸能
たくさんの提灯とともにみたままつりを盛り上げているのが、毎日行われるさまざまな奉納行事。なかでも、吹奏楽パレードや阿波踊り、みこし振りや青森ねぶたといった各地の伝統芸能が楽しめるのは、みたままつりならでは。みこし振りとは、神輿を威勢よく上下左右に激しく振り動かすことを指し、激しく揺さぶることで、神輿に乗っている神様の霊の活力や霊威を高めると信じられているのだそう。最終日には迫力のある青森ねぶたが参道に登場します。
阿波踊りや青森ねぶたなど、東京だけではない各地の伝統芸能が奉納されるのは、ここに祀られている戦歿者に故郷の風景を楽しんでもらうことで、その「みたま」を慰めるためなのだといいます。能楽堂で日本舞踊や浪曲、詩吟などが催されたり、外苑で開かれる盆踊りや、神門に仙台七夕飾りが掲げられているのも、同じ理由から。
この時期だけの特別な参拝へ
まつりの期間中は、拝殿に掛けられる神前幕も、普段の白幕から紫幕と呼ばれる特別な幕に変わります。紫は高貴であるとともに、魔を祓うとされる色だといわれます。だから、紫幕が張られるのは、みたままつりや重要な神事のときだけ。
紫幕の下で参拝するだけでも、いつもとは違う雰囲気を味わえますが、みたままつりに来たらぜひ体験したいのが、まつりの期間だけの特別な参拝。普段は入ることのできない場所で参拝できる「夜間中庭参拝」です。中庭とは、拝殿の奥にある、本殿の前の庭のこと。受付で玉串料2000円を納め、いざ中庭へ。本殿前の神聖な場所なので、神職からのお祓いを受けてから、本殿の前へと進みます。
幻想的な灯りに包まれた中庭は、まつりの喧噪とは打って変わって厳かな雰囲気。特別な空間に身を置き、玉砂利を踏みしめながら歩いているだけで、心が落ち着いていくような気持ちになるのが不思議です。お参りのあとは、美しく浮かび上がる本殿をパチリ。夜間中庭参拝の受付は18時から21時10分まで。先着でこすずまもりの授与もあります。
夏のにぎわいにこめられた思い
神札所では、ほおずき提灯(1500円)も頒布されています。まるで万華鏡のように次々と色を変える提灯の光の可愛いこと! 先祖の「みたま」をお迎えする道しるべとして飾られる、ほおずきに見立てているそう。青・紫・桃・黄の4色があります。
たくさんの献灯の光、伝統芸能、そしてにぎわいの奥にある厳かな空間。4日間にわたって開かれるみたままつりに足を運び、にぎわいの中に身を置いてみると、祭りとはただ楽しいだけのものではなく、そこに先祖や神々への深い感謝の気持ちが込められているのだということに、あらためて気づかされます。年に一度の光の祭典。ぜひ体験してみてください。